STORIES:OKUROJI

【Photographer's OKUROJI】#6
銀座の味な劇場、まんてん鮨で美味い鮨を

【Photographer's OKUROJI】#6<br>銀座の味な劇場、まんてん鮨で美味い鮨を<br/>
ストーリー

2021.01.08

この記事をシェア

写真家の在本彌生さんがOKUROJIを訪れ、撮影。彼女のフィルターを通して見た、OKUROJIの姿を写真とエッセイで綴ります。今回は『まんてん鮨』にフォーカス。

Photo & Text: Yayoi Arimoto

銀座の味な劇場、まんてん鮨で美味い鮨を

寿司屋のカウンターで寿司を食べることは、私の中ではいつでもとても嬉しいイベントだ。五感をフル回転させて楽しむエンターテイメントだと思っている。フレンチでも中華でもイタリアンでも、食事はそれぞれに舌で味わう以外のチャームポイントがあり、それが料理の「もうひとつの味」になるケースも多いが、寿司はそれが顕著に現れる食事だと思う。

カウンターに座った途端、私は「寿司劇場」の観客だ。寿司職人たちの動き、ケースに並ぶぴかぴかの魚たちの堂々たる姿、幕が開いたらさあ、そこからは一度きりの本番、今日のストーリーはどう展開するのか、少し興奮しながら一品一品を待つ。開店したてのOKUROJI「まんてん鮨」の真新しい白木のカウンターが今日の舞台、演出、監督は大将の山元慎さんだ。

その日のおまかせはといえば、こんな風だ。氷見ブリ、めかぶ、水蛸、マグロのさく漬け、サワラ玉ねぎ醤油、あん肝、ズワイガニがたっぷり潜んだ茶碗蒸し、銚子の金目鯛、だしで炊いた牡蠣、小肌にはちらりと大葉が隠れていて、はりはり大根の食感を楽しんだらえのきの昆布締めにぎりがつづく。目の前で仕事されている職人の又吉祐司さんの手さばき、所作は流れるようだ。テンポよく供されるつまみとにぎりのリズムにワクワクしながら、ずっとここに座って食べ続けられたらいいのにと、この辺りで思い始める。すると青森から来たエゾアワビが登場し、いくらの松前漬け、かつお、長芋のわさび漬け、白子、うに二種はワカメで育ったムラサキウニと昆布で育ったバフンウニ、ネギトロ巻きは玉ねぎでパリパリサクサクとした食感。心まで温まるしじみ汁のあと、アナゴと卵、甘すぎないかんぴょう巻き。そしてデザートに紅マドンナをひと切れ、、、満足、もちろん満足だけど、この舞台の終演が近づいていることが心から寂しい。寿司だけでなく、日本酒のセレクトも素晴らしいこともお伝えしておきたい。絶妙のタイミングで、寿司とつまみに合うものをすすめてくださる。銀座で寿司を、というと、懐具合が気になってしまうが、まんてん鮨はその点安心。腕の良い職人の技を間近に眺めつつ、何も恐れず食することを楽しめる場がここにあるのは、ちょっとした奇跡なのかもしれない。大将は朗らかな笑顔で「いってらっしゃい!」。その声に促されて店を出る。さて、次はいつまんてん鮨に帰ってこようかな。

Profile

在本彌生(ありもと・やよい)
東京生まれ。外資系航空会社で乗務員として勤務、乗客の勧めで写真と出会う。以降、時間と場所を問わず驚きと発見のビジョンを表現出来る写真の世界に夢中になる。美しく奇妙、クールで暖かい魅力的な被写体を求め、世界を飛び回り続けている。2006年5月よりフリーランスフォトグラファーとして活動を開始。雑誌多数、カタログ、CDジャケット、TVCM、広告、展覧会にて活動中。

http://yayoiarimoto.jp/photo/fashion/

 

この記事をシェア

関連記事

Page top